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腫瘍治療 [腫瘍]

 今回のブログは腫瘍の治療についてです。

 動物に腫瘍が発見され治療が必要となった際には、その腫瘍をどのように治療していくのかという治療計画を立てます。

 その治療の中で、基本となるものがあるのですが、それが外科療法、化学療法、放射線療法です。

 近年ではこれらの他にも、免疫療法や温熱療法などといったものがありますが、三大治療と呼ばれるものとなると上記の三つになります。

 こういった腫瘍の治療にはそれぞれメリットやデメリットが存在しますし、腫瘍の種類や動物の状態、目指す治療のゴール(完治を目指すのか現状維持を目指すのかなど)、動物診療施設の設備等によって選択するものが変わってきます。

 あまり長々と書くと文章量がとんでもないことになりますので、簡単にそれぞれの治療方法を説明してみます。


 まず、外科療法ですが、これは手術によって腫瘍をとってしまうことです。

 メリットとしては、腫瘍が限局している(その部分にだけある)のであれば、手術によって根治が可能であること、他の治療に比べて短い期間で腫瘍細胞を減らすことができること、全身に対しての細胞毒性(薬等の副作用)や発がん性がないことがあげられます。

 逆にデメリットは、麻酔が必要となるので麻酔に対してのリスクがあること、場所によっては見た目の変化や機能の欠損が生じる可能性があります(足にできた腫瘍の際の断脚や、目にできた腫瘍に対しての眼球摘出など)。


 つぎに化学療法ですが、これは薬を使って腫瘍細胞をやっつけるというこです。

 メリットとしては、外科療法や放射線療法と違って全身に作用するということ、麻酔が必要でないこと(使う薬剤や動物の性格によっては鎮静をかけることはあります)があげられます。

 デメリットとしては、薬の副作用が生じる可能性があること(白血球の減少や脱毛、胃腸障害など)、薬の投与中に薬が漏れてしまうことによるリスク(皮膚炎など)、あまり大きな腫瘍等に関しては単独では効果がみられないことが多い(リンパ腫等の一部の腫瘍は除く)ことなどがあげられます。


 最後に放射線療法ですが、これは腫瘍に放射線をあてることで腫瘍細胞をやっつけるものです。

 メリットとしては、局所の腫瘍を制御するものですが、外科療法と違って、見た目の変化や機能の欠損が起こりにくいことがあげられます。

 デメリットとしては、あくまで局所治療であること、複数回の麻酔が必要となること、放射線障害が発生する可能性があること、設備のコストが高いことなどがあげられます。



 とりあえず三つの治療方法をあげてみましたが、大学病院などを除く一般的な動物診療施設では、なかなか放射線治療の設備があるところは少ないので、通常は外科療法や化学療法、その他の治療を単独、もしくは組み合わせて治療に臨むのが一般的ですね。

 お家のペットに腫瘍が見つかってしまった場合は、やはりみなさん混乱されてしまうことが多いのですが、動物の状態(麻酔がかけられるのかどうかなど)や、できた腫瘍の種類(局所のものか全身性のものかなど)、治療の目的(完治を目指すのか緩和治療を行うのか)によって方法は様々です、場合によっては「治療をしない」という選択をすることもあると思います、それらの中からお家の子に合った治療を獣医師と相談のうえで選んであげてください。


 結局文章が長くなってしまいましたね、これでも無理やり短めにしたつもりなんですが・・・。

 かなりざっくり書いているので文章ではわかりにくい点もあると思います、詳しくは知りたい方は来院の際に直接聞いてください。

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[眠い(睡眠)]
タグ:腫瘍 治療
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腫瘍について [腫瘍]

 今回は腫瘍についての話をさせてもらおうと思います。

 腫瘍とは「本来自己の体内に存在する細胞が、自律的に無目的かつ過剰に増殖する状態」と定義されます。

 ざっくりいうと「体の中の細胞が勝手に増えすぎてしまう」ということです。

 腫瘍の中には良性腫瘍と悪性腫瘍とがあり、転移して体のあちこちに散らばって増えていくのが悪性腫瘍で、転移せずにできた場所でじっとしているのが良性腫瘍となります。(細かく言うともっといろいろな定義があるのですが、ここではおおまかに分けさせてもらいます。)

 よく診察の中で腫瘍の話をさせていただいているときに、「がんですか!?」と言われることがあるのですが、がんとは上皮といって皮膚や線細胞(乳腺 etc)の悪性腫瘍のことですので、腫瘍=悪性=がんというわけではありません、良性の腫瘍であれば治療せずにそのままおいておくこともあります。

 悪性腫瘍は体のあちこちに広がって悪さをしたり、腫瘍自体が体に対して悪さをすることがあるので、できるだけ早めに治療に入ってあげた方がいいです、また良性であったとしても、見た目に問題があるもの、大きくなって日常生活に支障がでるものや、自壊といって腫瘍が維持できなくなってしまい中が壊死してしまう(腐ってしまう)ようなものは治療の対象になります。

 腫瘍の治療には三大治療と呼ばれる外科療法、化学療法、放射線治療や、そのほかの治療があり、できた腫瘍や動物の状態、治療を行う施設の状況などにより治療を選択していきます。(これについてはまたいつか話をアップしたいと思います。)

 最近では、お家で飼われているペットの平均寿命がのびていることや、昔に比べて動物病院の検査機器が充実していたり、ペットが検査を受ける機会が増えていることで、腫瘍が発見されるケースが増えてきています。

 腫瘍の種類にもよりますが、早期に発見できたものであれば、たとえ悪性腫瘍であったとしても治療により完治が見込めるものもあるため、定期的な健康検査を受けてみたり、普段からお家でペットの様子をよく見てもらって、何か少しでも気になることがあれば当院もしくはかかりつけの獣医さんに相談してみてください。

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「もなかの出番は無しですか・・・」
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乳腺腫瘍 [腫瘍]

さて、今回は僕(院長)が腫瘍科認定医2種ということもありますので、腫瘍のことについて書いてみようと思います。

今回は乳腺腫瘍について、この腫瘍は僕たち獣医師が、治療にたずさわる機会が一番多い腫瘍でもあります。

乳腺腫瘍はお乳のところにできるしこりで、だいたい10歳前後の未避妊の子にできることが多いのですが、早い子だと5歳くらいでできてしまうこともあります。

このしこりは、一つだけできることもあれば、複数個できてしまう場合もあります。

報告によって差はありますが、犬で30〜50%、猫では90%ぐらいの確率で悪性の癌であると言われていますが、実際に調べるには組織を取って病理検査を行わなくてはなりません。

治療に関しては第一選択は外科手術となり、これは先ほどの病理検査を兼ねて行うことがほとんどです。

病理検査の結果次第では、補助的に化学療法などを行いますが、理想は手術のみで取りきってしまうことで、その為には手術が必要な場合には、なるべく早く手術を実施してあげることが大事になってきます。

手術が必要になるかどうかは、腫瘍の大きさ、増大速度、できた場所や数、動物の年齢等様々なことを考慮して判断する必要があります。

もし、お家のペットのお乳のあたりを触ってみて、何かしこりのようなものが見つかった場合には、当院もしくはかかりつけ獣医さんに相談してください。

ちなみに、乳腺腫瘍は生後早い段階で避妊手術を行うことで発生率を下げることができるので、子供ができないようにというだけでなく、将来的な乳腺腫瘍の予防といった意味で避妊手術を考えてあげるのもいいと思います。

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もなかは生後半年で避妊手術をしました、まだあどけないですね、鼻も黒いですし。
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